最近では当たり前のように耳にするようになった「カーボンニュートラル」。
地球規模の課題である気候変動問題の解決に向けて、2015年にパリ協定が採択され、世界共通の目標として「世界的な平均気温上昇を2℃より低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること」を設定しました。
このパリ協定を受けて、世界各国で温暖化の原因となっている温室効果ガスの削減目標を掲げており、日本政府は「2013年度対比で2030年までに-46%、2050年までに実質0(カーボンニュートラル)を目指す」ことを目標としました。
【世界各国の目標】
国・地域 | 概要 |
日本 | 2050年排出量実質ゼロ ・脱炭素化に向けた民間投資を後押しし、経済と環境の好循環につなげる方針 ・炭素価格制度の導入に向けて、2021年度中に素案をまとめる |
アメリカ | 2050年排出量実質ゼロ(パリ協定復帰) ・2035年までに電力部門の温室効果ガス排出量実質ゼロを目指す ・発電所などのインフラ設備、クリーンエネルギーなどに4年間で計2兆ドルを投資する環境政策を掲げる |
中国 | 2060年排出量実質ゼロ ・2030年までに二酸化炭素排出量を05年比で65%以上削減 ・温暖化対策は中国よりも先進国が取り組むべきとの立場から、積極的な姿勢に転換 |
EU | 2050年排出量実質ゼロ ・気候変動問題を成長戦略として位置づけ ・今後10年間で1兆ユーロを投資し、再生可能エネルギーへの転換や雇用の転換を目指す |
イギリス | 2050年排出量実質ゼロ ・グリーン成長戦略のもと、養生風力や原子力、EVなど10の重点対象に120億ポンドの公的資金を投入 ・2030年までに二酸化炭素排出量を1990年比68%削減に目標を引き上げ |
なぜすべての企業が脱炭素に取り組まなければいけないのか
この脱炭素への取り組みは、大企業だけが取り組めば良い課題ではなく、中堅・中小企業を含むすべての企業が取り組む必要があります。
脱炭素への取り組みを行わないことは、将来のリスクとなり、逆に早いうちから取り組むことで、ビジネスチャンスにもなるのです。
では、なぜ大企業だけでなくすべての企業が脱炭素に取り組む必要があるのかについて解説します。
脱炭素に取り組むべき3つの理由
1.サプライチェーンからの要請
カーボンニュートラルに向けて、「GHGプロコトル」という温室効果ガスの排出量を算定・報告する際の国際的な基準が設けられました。
このGHGプロコトルでは、自社だけでなく、上流・下流を含むサプライチェーン全体のCO2排出量を算定し、報告する必要があります。
大企業にとって、自社以外のサプライチェーンからのCO2排出量(SCOPE3)が大きな割合を占めるというケースが多いのです。
そのため、大企業のCO2排出量削減目標には、サプライチェーンからのCO2排出量を削減することが必須であり、サプライチェーンに対してCO2排出量削減への取り組み要請が出されたり、また目標を達成できない企業とは今後取引をしない、ということも生じているのです。
【GHGプロコトルで定められたCO2排出量算定の考え方】
(出典:環境省HPより)
【大企業がサプライチェーンに求める脱炭素要請の例】
企業・団体 | 要請内容 |
トヨタ自動車 | 直接取引する自動車部品メーカーに対し、2021年のCO2排出量を前年比3%減らすよう求めた |
本田技研工業 | 主要部品メーカーに対し、CO2排出量を2019年度比で毎年4%ずつ減らし、50年に実質ゼロにするよう要請した。 |
日本建設業連合会 | 施工段階におけるCO2排出量を2013年度比で、2030~40年度の早い時期に40%削減、2050年までに実質ゼロを目指す取り組みを推進。 |
Amazon | 2030年までに商品輸送の50%を「カーボンニュートラル」にするという目標を発表した。 |
2.株主や投資家、金融機関からの圧力
近年、ESG投資というものが注目されるようになりました。
ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)という非財務情報を考慮して投資を行うもののことを言います。
売上や利益などの財務情報だけでなく、ESGに対してきちんと取り組んでいる企業なのか、ということも企業評価の基準となってきています。
このESG投資が徐々に拡大してきており、脱炭素に対してもしっかりと取り組みを実施していないと、金融機関などから資金を調達しづらくなってきているのです。
これまでは、企業の気候変動への対策などは、あくまでCSR活動の一環として取り組むもので、コスト増加につながるものと考えられていましたが、今後は経営上の重要課題として全社で取り組む必要があります。
3.カーボンプライシング制度の導入
「カーボンプライシング」とは、企業などの排出するCO2(カーボン、炭素)に価格をつけ、それによって排出者の行動を変化させるために導入する政策手法です。
有名な手法には「炭素税」や「排出量取引」と呼ばれる制度がありますが、そのほかにも、インターナル・カーボンプライシング(企業が自社のCO2排出を抑えるために、炭素に対して独自に価格付けをし、投資判断などに活用する)や、CO2の削減を「価値」と見なして証書化し、売買取引をおこなう「クレジット取引」などがあります。
欧州を中心に、世界各国ではすでに炭素税や排出量取引制度が導入されています。
今後、日本でも本格的にカーボンプライシングが導入されることが予定されているため、制度導入時に取り残されないために今のうちから脱炭素に取り組むことが重要です。
【カーボンプライシングの分類】
(出典:資源エネルギー庁HPより)
【排出量取引制度導入国の例】
(出典:資源エネルギー庁HPより)
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