集中設置と分散設置のメリット・デメリット
どちらの設置方法にするか決めるうえで、まずはそれぞれのメリット・デメリットを理解することが重要です。
どちらが適しているのか、以下の8項目でチェックしてみましょう。
- 日常メンテナンス
- 集中管理
- 台数制御
- メイン配管上の圧力
- 補機(ドライヤ・タンク・フィルタ・冷却塔・ポンプなど)
- 合計設置面積
- 環境対策(騒音・ドレン排水など)
- コスト関連(イニシャル・ランニング・メンテナンス)
日常メンテナンス
設備には定期的なメンテナンスが必要です。
日常メンテナンスの点では、集中設置に軍配が上がります。
何と言っても、機器数・メンテナンスを行う場所の数・距離といったことが日常保全の効率性に大きく影響していきます。
最近では人手不足の設備課・保全課も多く、先行きを見通していく中で、日常保全のしやすさは重要な要素と言えます。
集中管理
設備稼働状況等を把握する為の集中管理の容易さは、工場管理をしていく上で重要な項目です。
集中管理に関しては、集中設置の方が容易です。
集中設置の場合はその場所に制御やロギングする盤を設置し、中央部分と接続するという方法取ります。
一方で、分散設置の場合は各コンプレッサからどのようにデータを発信させるか、その位置関係は…と物理的な手間が必要となります。
また、通信機器も劣化が起きますので、後の保全のしやすさも設置上の重要な視点です。
台数制御
コンプレッサ運用で省エネ性を高める上で制御は有効な手法と言えます。
この点でも、集中設置に軍配が上がります。
集中設置の場合は、手前の配管圧を見ながら制御をする、制御もすぐ横に設置されている為、制御がしやすいという特徴があります。
一方で分散設置の場合は目的値の数値の定義から始まり、どのコンプレッサをどのように制御していくかというロジックが必要となります。
メイン配管上の圧力
コンプレッサの目的は一低圧以上の空気を設備に供給することにあります。
その設定圧に満たない場合はコンプレッサの吐出空気圧を高める必要があります。
ここでは、分散設置の方がメリットがあります。
集中設置の場合、空気の発生端が一部であるため、末端に行くほど空気圧が下がっていくという傾向があります。
一方で分散設置では、空気の供給元が多数となるため、配管圧が一定になりやすいという傾向にあります。
必然的に、集中設置の方がコンプレッサの設定圧が高くなる傾向にあります。
補機(ドライヤ・タンク・フィルタ・冷却塔・ポンプなど)
コンプレッサには様々な部品や付随設備があります。
それらが一つとして欠けることなく準備することが必要です。
集中設置の場合は、必要に応じてまとめることが可能です。
一方で分散設置の方は、場所ごとに補機が必要となる為、イニシャルコストも、後の保全コストも高くなる傾向にあります。
ここの部分は集中設置の大きなメリットと言えます。
合計設置面積
工場内の面積は限られています。
その中でどのように設置をしていくのかは、工場の有効活用を考える上で重要な項目です。
集中設置の方が、小さくおさめることができるため、設置に必要な面積は小さくなります。
補機の数や配管の回し方によって、物理的に分散設置の方が必要とする面積は広くなります。
それが生産に影響しない場合であれば良いですが、コンプレッサ設置の為に、生産エリアの面積を狭くすることは本末転倒と言えます。
環境対策(騒音・ドレン排水など)
運用面で落としがちな項目として、騒音やドレン排水の処理方法などがあります。
設置できると思っていても、防音対策や排水の処理ルートの構築で手間になってしまうケースも聞かれます。
これも今までと同様に、設置件数が導入上のハードルとなります。
集中設置の場合は台数関係なく一定数・対応ボリュームで足りますが、分散設置の場合はそれぞれの場所で準備が必要となります。
そのため、集中設置の方が比較的容易に準備が可能です。
コスト関連(イニシャル・ランニング・メンテナンス)
そして、何よりも気になる部分がコストの部分です。
どちらの設置方法が費用的に見ていってベストなのか、その部分を見落とすわけにはいきません。
コストは大きく分けて3つあります。
- イニシャルコスト(導入に係る費用)
- メンテナンスコスト(メンテナンスに係る費用)
- ランニングコスト(稼働に係る費用)
イニシャルコストは、機器代金・工事代金を踏まえても、集中設置の方が安く抑えられます。
メンテナンスコストは、分散設置は補機が多くなるため、結果として集中設置の方が安く済みます。
ランニングコストに関しては、集中設置の場合、末端の圧損を補うために設定圧から上げていく必要があります。
必然的にランニングコストは分散設置の方が良くなることが多いと言われています。
理想の設置と制御のあり方
コンプレッサの集中設置と分散設置。
どの事業所様でもどちらが正しいのかと常に模索しているテーマといえます。
設備の設置状況上、集中設置が望ましい場合もありますが、一方で分散設置が望ましいが制御が出来なくて致し方なく集中設置にしているという事業所様もたまに見られます。
理想の設置方法とは、ずばり「集中・分散の混合設置」です。
具体的には、
- 末端までエアが行き届き設定圧を緩和できる設置方法
- イニシャルは仕方ないとして、保守の手間と費用を抑えられる方法
が理想の設置方法と言えます。
さらに、それらをつなぐ「台数制御システム」が設置されれば、求めるべき運用方法が確立されます。
例として、次のような設置方法が挙げられます。
・圧が最も持っていかれる設備の部分にスタンドアローンで1号機を設置。これをベース機として運転。
・他の2~4号機は一か所に設置。
・スタンドアローンのベース機とその運転状況を一括で制御できる台数制御システムを設置。
・台数制御の目的は要求に応じたエア量を供給すること。インバーター機は1台で十分となる。
しかし、理想とするコンプレッサの設置方法の実現には、次のようなハードルがあります。
- 遠隔地を一斉に制御できるようなシステムがない
- コンプレッサに関してメーカーの垣根を越えて提案する人がいない
- 省エネ効果を上部から求められるが、上手に出せない
- 導入時に検討できればよかったが、後から検討が大変
これらのハードルをクリアできる人と一緒に進めていくことが重要となります。