焼却施設のLED化が意外と進んでいない理由
日本国内における水銀灯のLED代替は徐々に進んでおり、照明工業会をはじめとする各種資料では2020年のLED化率は約50%と言われています。
いかがでしょう?この50%という数値。これだけ、世の中ではLEDが当たり前となりつつある状況下、意外と進んでいないと思われるのではないでしょうか。LED化が進まない理由は以下のようなことが考えられます。
水銀灯・蛍光灯からのLED化がなかなか進んでいない理由
- 照明は生産に直結しない為予算がつけづらい
- 高い天井に設置されていることも多く、工事代金が割高になる
- 手元に在庫があり、それを使い切らなければならない
- 球切れ・故障は徐々に広がっていく為、一斉交換のタイミングがつかめない
- 割高の時に見積もりをしてしまい、その当時の金額感が頭から離れない
そもそもLED化が進む背景となったのは、世界的な環境配慮、脱・水銀の流れからです。水銀の含有量が多い蛍光灯・水銀灯は徐々に製造が停止していき、市場からの流通も減っていく傾向にあります。
大手メーカーの蛍光灯・水銀灯の製造状況
- 岩崎電気 蛍光灯の製造停止 2019年9月末 ※一部機種のみ1年間の製造延長
- 三菱電機 蛍光灯の製造停止 2017年に告知 2018年6月から3度のタイミングで2019年3月に全品種製造停止
- パナソニック 蛍光灯の製造停止 2019年3月にて全品種製造停止
- 岩崎電気 水銀灯 2020年6月注文受付終了 2021年1月製造停止
- パナソニック 水銀灯 2020年6月末製造停止
上記のように、製造自体が停止してしまっている為に、今後LED化は必須事項となることが予想されます。しかし冒頭にお伝えした通りで、なかなかLED化できない理由が背景であるのも事実で、徐々に進んでいくことが予想されます。
なお、このようにLED導入のお手伝いをさせていただいている立場からすると、LED導入タイミングとしては”適切”ですという事をお伝えさせていただいています。その理由として、以下の事項が挙げられます。
LED導入を考えても良い時期であると考える理由
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- 世の中的にLEDに対する設備投資も前向きに受け取られるようになってきた
- 価格もある程度落ち着いてきており、底感が出てきている
- 粗悪品は限りなく減っており、品質も信頼ができる
- 中期になってしまうが、しっかりと投資回収ができる技術である
「LED=万能」は誤りである
しかし、世の中的にLED導入が進んでいるという事で、LED設備の導入をすればなんでもOKという訳ではありません。世の中に広まったと言っても、水銀灯や蛍光灯から比べれば短期間の出来事。全ての事象に対応ができるという訳でもありません。特に、環境の影響は大きく受ける傾向にあります。
あるお客様から頂いた相談事項
■相談事項
LED導入からそれほど期間が経っていないのですが、故障し、多数の交換を実施しておりますが、配線など調査しても問題はなく、メーカーからもLEDには問題なしという事で、困っています。故障の原因がわかれば幸いです。
■問題点
寿命より早いタイミングで壊れ始める
40,000時間の寿命と聞いていたが、想定より短い点灯時間で壊れたり、照度が落ちた状態になってしまう。
■LEDへの期待とのギャップ
長寿命 40,000時間に到達せず
■調査すると下記環境で使用されている事が多い
・高温/低温な環境
・オイルミストや硫化ガスなどが発生する環境
・湿度が高い
上記のように、LEDは万能ではありません。一般的な、汎用的な環境下であればトラブルも限りなく少ないくらいに設計精度が向上していますが、過酷な環境下や特殊な状況ではまだまだ耐えられないという事象が生まれています。しかし、世の中のLED化に進む風潮から、そのあたりを気にせず価格や予算あまりの執行などを理由に優先順位を考えずに導入してしまうケースが散見されます。そして、そのような事業所に限って、後にトラブルに直結し、後悔をするという様子が見られます。
結論、LEDは電子部品である
上記のお客様について、現地調査などをしていったところ、以下のような事象が見られました。
蛍光灯や水銀灯で問題なく稼働していたが、温度を測ると熱が籠りやすい場所では60度以上に達していた。交換時、そこまで確認し交換していなかったので、特定の場所のLEDが高確率で壊れてしまっていた。
焼却炉等があり、ガスが発生している場所やオイルミストが発生している場所でも他の場所に比べて高い故障率になってしまう。
当然、各メーカーも把握しているので、そのような環境では導入を見送る提案をする事が多いが、設備の変更等で、導入時と環境が変わる事もあり、そこまで注意がいかなかった。
それらの状況を踏まえて言えることはただ一つ。LEDは電子部品であり、水銀灯や蛍光灯のような「ただ光る物体」という認識では駄目であるという事です。
熱や劣悪な環境に強かった蛍光灯や水銀灯であるが、環境に対応したLED導入が必須である事が多くのトラブルを抱えられるお客様の事例からもわかります。トラブルによるLED単体の故障であればまだ良いですが、火災やラインを止めなければならないエリアや足場がなかなか組めない場所の選択は慎重にしてください。
特に配慮が必要な焼却施設のLED化
そのような流れから、焼却施設のようにガスや熱の影響を受けやすい事業所におけるLED化は細心の注意を払う事が必要となっていきます。そのポイントは大きく3つで以下となります。
照明器具選定
先ず何より照明器具の選定が最重要となります。冒頭お伝えした通り、一般的な環境下で使用できる照明器具は世の中に多く流通しています。一方で、特殊環境下で使用できるLED照明は限られています。特に熱やガスといった複数の劣化要因がある場合は、その照明器具の選定もより難易度を増します。
メンテナンス
安定的な事業所運営を考えていく上で、効率的にメンテナンスをして保全を図っていくという考え方と、壊れない器具を設置するのかという2つの考え方があります。勿論、後者の「壊れないものを選定する」というのが理想ですが、必ず経年劣化による故障は発生します。その為、7~10年後に訪れる設備更新を見越した照明器具の選定が必要となります。
施工提案
最後に重要になるのが、施工提案です。要するに、たとえ良い物を導入したいと考えても事業場の理解(公共施設の場合は入札)を乗り越えなければなりません。入札で価格が安かったために汎用品を導入し、後々になってメンテナンスコストが高くなったということでは元も子もありません。
これらの諸条件を踏まえて導入を検討していくことが必要であると言えます。
焼却施設の場合、球切れが起きてしまったあとにメンテナンスがしにくいというのが尚更、照明器具選定が重要になる理由です。良い照明器具を選べば、トラブルによる手間も減らすことができます。