
エネルギー価格の高止まりや脱炭素への要請を受けて、工場やビルの省エネ設備投資を検討する企業が増えています。一方で「設備更新には多額の初期費用がかかる」「本当に元が取れるのか判断しにくい」といった声も少なくありません。
そこで今回は、国の代表的な省エネ支援策である「省エネ・非化石転換補助金」の概要と、特にご相談の多い変圧器の更新、EMS(エネルギーマネジメントシステム)の導入について解説します。あわせて、設備投資を初期費用だけでなく「LCC(ライフサイクルコスト)」で評価する考え方をご紹介します。
省エネ・非化石転換補助金とは
省エネ・非化石転換補助金(正式名称:省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金)は、事業者の省エネ設備や非化石エネルギーへの転換につながる設備への投資を支援する制度で、一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)が執行しています。
制度は目的や事業規模に応じて4つの類型に分かれています。このうち、比較的取り組みやすく多くの事業者に活用されているのが(Ⅲ)と(Ⅳ)です。
詳細は SII の公式サイト(https://syouenehojyokin.sii.or.jp/)でご確認いただけます。
設備単位型でご相談が多い「変圧器」の更新
(Ⅲ)設備単位型は、SIIに登録された高効率設備の中から導入する機器を選び、既存設備と入れ替える類型です。現在は従来の「設備単位型(従来枠)」に加えて、「GX設備単位型(メーカー強化枠)」が設けられており、それぞれで対象機器や補助率などの要件が異なります。申請を検討する際は、導入予定の機器がどの枠の対象になるかを、その年度の公募要領で確認することが重要です。
対象設備には空調、照明、ボイラなどさまざまな機器がありますが、なかでもご相談が多いのが変圧器です。
変圧器は受変電設備の中核として24時間365日通電している機器です。そのため、負荷の有無にかかわらず発生する「無負荷損(鉄損)」と、負荷電流に応じて発生する「負荷損(銅損)」が、目に見えないかたちで常に電力を消費しています。設置から20年、30年と経過した変圧器は、現行のトップランナー基準に適合した高効率変圧器と比べて損失が大きく、更新による省エネ効果が期待しやすい設備です。
また、変圧器は照明や空調のように省エネ効果を実感しにくいため、老朽化していても更新が後回しにされがちです。補助金の活用は、こうした「見えないロス」を見直すよい機会になります。
古い変圧器の中には、低濃度PCBを含む可能性がある機器もあります。低濃度PCB廃棄物の処分期限(2027年3月末)も見据えて、計画的に更新を検討することをおすすめします。
エネルギー需要最適化型で進めるEMSの導入
(Ⅳ)エネルギー需要最適化型は、SIIに登録されたEMSを導入し、エネルギーの使用状況を計測・分析・制御することで省エネを図る類型です。
設備の高効率化が「ハード面」の省エネだとすれば、EMSは「運用面」の省エネを担います。電力の使用状況をリアルタイムで見える化することで、無駄な稼働やピーク電力の発生要因を把握でき、空調や生産設備の制御、デマンド管理などにつなげられます。
高効率設備への更新とEMSによる運用改善を組み合わせることで、設備そのものの効率向上と、使い方の最適化の両面から省エネ効果を高めることができます。
設備投資は「LCC」で評価する
省エネ設備の導入を判断するときに押さえておきたいのが、LCC(ライフサイクルコスト)という考え方です。LCCとは、製品や設備、建物などが誕生(企画・取得)してから、最終的に廃棄されるまでの生涯にかかる総費用のことです。
設備の比較検討では初期費用に目が向きがちですが、長期間使い続ける設備ほど、運用中のエネルギー費がLCCの大部分を占めます。変圧器のように20年以上使われ、常時通電している機器では、その傾向が顕著です。
変圧器更新の試算例
LCCの考え方をイメージしていただくため、仮定条件による試算をご紹介します(実際の効果は機器仕様や負荷状況によって異なります)。
| 項目 | 既存変圧器(老朽機) | 高効率変圧器 |
|---|---|---|
| 容量 | 1,000kVA | 1,000kVA |
| 無負荷損 | 1.8kW | 0.6kW |
| 負荷損(定格時) | 12kW | 8kW |
| 平均負荷率40%時の損失 | 約3.7kW | 約1.9kW |
| 年間損失電力量 | 約32,600kWh | 約16,500kWh |
この条件では、年間約16,000kWhの損失を削減できます。電力単価を25円/kWhとすると年間約40万円、20年間では約800万円の電気代削減となり、CO2排出量も年間数トン規模で削減できる計算です。
つまり、初期費用が多少高くても、運用期間全体で見れば高効率機の方がLCCは小さくなるケースが多いのです。さらに補助金によって初期費用の一部をまかなえれば、投資回収期間を短縮でき、LCCの最適化をより確実に図れます。
補助金を活用する際の流れと注意点
補助金は公募期間が限られているため、設備選定や見積取得は余裕をもって進める必要があります。一般的な流れは次のとおりです。
- 1公募要領を確認
対象設備・補助率・公募期間など、その年度の要件を確認します。 - 2設備の選定・見積取得
既存設備の状況を把握し、導入する機器と工事内容を決めます。 - 3申請
公募期間内に申請書類を提出します。 - 4交付決定
審査を経て交付が決定されます。 - ⚠ 交付決定前に契約・発注した設備は、原則として補助対象外です
- 5発注・設置工事
交付決定後に契約・発注し、設備を導入します。 - 6実績報告・補助金の受領
事業完了後に実績を報告し、補助金が支払われます。 - 7省エネ効果の報告
導入後、一定期間にわたり効果の報告が求められます。
要件は年度ごとに見直されるため、最新の公募要領を必ずご確認ください。
まとめ
省エネ設備への投資は、初期費用だけでなく、運用から廃棄までを含めたLCCで評価することで、本当の意味での経済性が見えてきます。常時通電している変圧器の高効率化や、EMSによるエネルギー使用の最適化は、LCCの低減とCO2削減の両立につながる有効な手段です。
ミツイワでは、既存設備の状況確認から、高効率変圧器への更新、EMSの導入まで、お客様の省エネ設備投資をトータルでご提案しています。設備更新をご検討の際は、お気軽にご相談ください。